商品の詳細情報
シモナッツィ・アメデオ (Amedeo Simonazzi, 1891 - 1974) イタリアのヴァイオリン製作家 経歴と背景 シモナッツィ・アメデオ(1891年4月22日生まれ)は、北イタリアのグアルティエーリ出身のヴァイオリン製作家です。幼少より父オッドーネ(コントラバス奏者で、エジプトやフランスでも活動)の手ほどきで製作の基礎を学びました。その後、青年期にはマンツァ(マントヴァ)の巨匠ステファノ・スカランペッラ(当時すでに高齢でした)の工房を度々訪れ、直接指導を受けています。彼はいわばスカランペッラの高弟の一人であり(ラベルにも師としてスカランペッラの名を記しています)、この経験が自身の製作スタイルに大きな影響を与えました。 シモナッツィの一家は後にエミリア地方の小都市サンタ・ヴィットーリアに移り住み、さらにその後エミリア県都のレッジョ・エミリアへ転居しました。彼自身も長年レッジョ・エミリアを拠点に製作を続けています。息子のリッカルドもコントラバス奏者となり、父から少しの間製作を学んで楽器を作ったことがあるようです。しかしシモナッツィは自ら大きな工房を構えて弟子を多く育てたわけではなく、正式な弟子は息子以外にはいなかったとされています。 非常に長い製作経歴を持ち、活動期間はおよそ1910年代から1970年代まで及びました。その間、製作された楽器の総数については情報源によって異なりますが、ジョン・ディルワースなど一部資料では130挺ほどのヴァイオリンと数台のチェロを製作したとされ、一方で生涯に400 - 500挺もの楽器を作ったとする推計もあります。いずれにせよ20世紀イタリア、特にエミリア地方の製作家としては群を抜いて多産であり、20世紀エミリア派を代表する名工の一人に数えられています。1974年、83歳で没しました(タリシオ社の記録によれば1974年没。なお、一部資料には1984年没とする記述もありますが、複数の専門情報源で1974年没と確認されています。 製作の特徴とスタイル シモナッツィの製作スタイルは師スカランペッラの影響を色濃く受けつつも、より精密で几帳面な作風であると評されています。スカランペッラ作品が時に荒削りで即興的とも言われるのに対し、シモナッツィの作品は細部の工作精度が高く、仕上げが丁寧です。これはエミリア地方(パルマやレッジョ周辺)の伝統と、マントヴァ派(スカランペッラに連なる流れ)の融合による独自のバランスといえます。具体的にはグァルネリ・デル・ジェズのモデル(型)をヴァイオリンに愛用し、ビオラには時折スカランペッラ譲りのパターンを用いることもありました。また製作初期にはグァダニーニのモデルにも取り組んでおり、ガリアーノ系のモデルなどは用いなかったようです。このようにモデル選択とスタイルの点で、エミリアとマントヴァ両派の要素を独自に組み合わせています。 用材とニス(ヴァーニッシュ)については、シモナッツィは高品質な板材を選び抜いて使用しました。裏板には美しい虎杢模様(フレイム)の入ったメイプル(二枚板が多い)を用い、表板のスプルースも年輪の揃った良材です。ニスは透明感のある油性ニスで、初期から中期にかけては黄金がかった赤みの強い橙赤色、後年になるとやや黄金調の黄橙色に変化していったと伝えられます。ニスの光沢と色調は、エミリア地方の他の20世紀イタリアンと比べても遜色なく非常に美しいものです。また、厚塗りで重厚なスカランペッラのニスと比べると透明で均一な仕上がりになっているのも特徴です。 この1920年製作と推定されるシモナッツィ・アメデオのヴァイオリン裏板は、2枚板のメイプルに力強い虎杢が見られ、ニスは赤みを帯びたオレンジブラウン(黄金赤色)で透明感がある。こうした木材とニスの選択・仕上げはシモナッツィの作品の典型と言える。製作精度も高く、コーナーやパーフリングの処理も丁寧に施されている。 さらに、シモナッツィのスクロール(渦巻き頭)の彫刻も評価されています。スクロールは師匠筋のスカランペッラやガッダのような力強さを持ちつつ、造形は整然としており左右対称性や渦巻きの奥行きも正確です。エフホールの形状にも個性があり、グァルネリモデルらしくやや太めで開口部が広く、音響的にも開放的な音が出るデザインです。総じてシモナッツィの楽器は工作の正確さと音響的な力強さを兼ね備え、プロの演奏家にも信頼される品質を持っています。 ラベルの分析と真贋の識別 シモナッツィ・アメデオのオリジナルラベル(1920年製作ヴァイオリンの内部)。「Simonazzi Amedeo, Scolaro di 'Stefano Scarampella' , Fatto a S. Vittoria (Emilia), Anno 1920」と記されている。師である「ステファノ・スカランペッラの弟子」であり、「エミリア州サンタ・ヴィットーリアにて製作」、そして「1920年製」であることが明記されている。年号の「1920」の20の部分は手書きで記入されている。 シモナッツィの楽器には上記のような印刷ラベルが貼られています。基本的なレイアウトは、「Simonazzi Amedeo(シモナッツィ・アメデオ)、Scolaro di 'Stefano Scarampella'(『ステファノ・スカランペッラ』の弟子)、Fatto a S. Vittoria (Emilia)(エミリア州サンタ・ヴィットーリアにて製作)、Anno 19__(19XX年)」という4行構成です。ラベルには飾り枠が印刷され、印字には20世紀前半のサンセリフ書体(1940年代の例では「センプリチタ (Semplicità)」という当時イタリアで新しかった書体)が使用されていました。ラベルの紙は年代相応に薄い生成り色で、古いものは経年で黄化しています。多くの場合、西暦の下2桁(もしくは製作年全体)を製作家が手書きで書き込む形式をとっており、上掲の写真でも「Anno 19」の後に「20」が直筆で追記されています。作品によっては製作家自身のサインがラベルに追加されている例もあり、例えば1939年製の楽器ではラベルに直筆署名が見られた記録があります。なお、シモナッツィは活動拠点を後年レッジョ・エミリア市に移しましたが、ラベルには一貫して古い「S. Vittoria (Emilia)」表記を用いたものと、実際に「Reggio Emilia」と記載されたもの両方が確認されています。例えば1943年製のラベルには「Reggio Emilia」とあり fontsinuse.com、1946年製のラベルには従来通り「S. Vittoria (Emilia)」と記されています。このことから、第二次大戦前後の移住期にラベル表記を変更した可能性がありますが、製作家があえて旧来の地名を残したラベル在庫を使い続けた可能性も指摘されています。いずれにせよ、ラベルの表記バリエーションは存在しますが、いずれも内容としては師匠の名と製作地・年を明示する点で共通しています。 鑑定書はありません。真贋の保証はできません。 評価と市場での取引 シモナッツィの楽器は現在、プロの奏者やコレクターから良質なモダンイタリーンとして高く評価されています。特に師スカランペッラ譲りの力強い音色と、精密な工作による信頼性から、オーケストラ団員や室内楽奏者が愛用する例もあります。彼の故郷であるエミリア地方は伝統的にヴァイオリンやビオラ、コントラバスによる小アンサンブルが盛んな土地柄であり、そうした地元の音楽家たちにとってシモナッツィの楽器は身近で貴重な存在でした。国際的な独奏者でシモナッツィの楽器を主要楽器にしている例は多くありませんが、イタリア国内を中心にプロの演奏現場で使用され続けています。また、シモナッツィは20世紀のイタリア製作史において重要な位置を占める人物として、専門書やカタログにも掲載されています(例えば彼の作品はイタリア製作家の図鑑に選定され収録されています)。そのため、楽器市場でも安定した需要があり、年々評価額が上昇傾向にあります。 オークション取引価格の例: シモナッツィ作品はオークションにも度々出品されており、その価格は状態や年代によって幅がありますが、以下に主な記録を挙げます。 最高記録: 2012年4月、ニューヨークのタリシオにてシモナッツィ製ヴァイオリンが 22,800ドルで落札されています。これは現在知られる彼のヴァイオリンとして最高額の一つです。 最近の高額例: 2024年3月、ロンドンのアマティオークションではシモナッツィ製チェロ(1966年製ラベル)が 18,880ポンドで落札されました。チェロは製作数が少ないこともあり、高い評価額がついています。 その他の取引: シモナッツィのヴァイオリンは、2000年代の国際オークションで概ね 5,000~10,000ポンド前後で取引されてきました。例えば1920年代製作のヴァイオリンが2009年に約8,000ポンド、1950年前後の作品が2007年に約7,500ポンドで落札された記録があります。1995年には1920年製のヴァイオリンに対し異例に高い約11,572ポンドという落札例もありました。ビオラに関しても、41.3cmサイズの1966年製が2003年に約2,300ポンドといった実績があります。総じて、ヴァイオリンよりもビオラの方がやや安価な傾向ですが、作品の状態や由来によって値動きがあります。 以上のように、シモナッツィの作品はモダンイタリアンとしては中堅から上位の価格帯に位置付けられます。彼の師スカランペッラの楽器が現在数千万円にも及ぶのと比べれば手頃ですが、それでも音響的価値と歴史的価値から数百万円程度(1万~3万ドル級)の市場評価が付けられています。鑑定書付きの優品や希少なチェロなどでは更に高額で取引されることもあり、今後も評価が上昇する可能性があります。 シモナッツィ・アメデオは、その生涯を通じてエミリアの地で伝統を守りつつ革新的な20世紀イタリア弦楽器製作に貢献した名匠です。彼の楽器は師匠譲りの芸術性と自身の緻密さが融合したもので、高い品質と信頼性を備えています。ラベルに記された「Stefano Scarampellaの弟子」という言葉は、その系譜に連なる誇りを示すものであり、現代では歴史的な価値を持つ証ともなっています。シモナッツィのヴァイオリンやビオラ、チェロは今なお演奏家たちに愛用され、その音色は聴衆を魅了し続けています。アンティークとしての投機的な価値のみならず、実用的な演奏楽器としての価値も兼ね備えている点で、シモナッツィの作品は20世紀イタリアンの中でも特別な地位を占めると言えるでしょう。鑑定書はありません。真贋の保証はできません。ラベルドということでご理解お願いします。